「17歳℃」 麦盛なぎ
17歳℃ (ビーツコミックス) (マッグガーデンコミックス Beat’sシリーズ) 麦盛なぎ マッグガーデン 2013-05-14 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
90年代、10代、ロック。やっぱり最高だ。
最近は中二病モノとか多いけど、大体がみんな心が綺麗すぎる。もっと10代って心の揺れ幅がとてつもなくて、いつもグチャグチャしてて不安で退屈で爆笑してた。
この漫画には、そんなグッチャグチャが余すことなく入ってる。10代の心には無抵抗でロックが入り込んでくるんだよね。
各登場人物も、適切にそのシーンの表情を丁寧に描いてる。麦盛なぎ、これから追っていきます!
あのラストシーン、物足りない人もいるかもしれないけど、なつきが関西弁を喋った瞬間に全てが完結してるんだね。そして17歳を自覚しだした樋野の青春の「終わり」も同時に始まった。そんな、なかなかイイラストシーンだった。
「ミスミソウ 完全版」上・下 押切蓮介
ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス) | |
押切 蓮介 双葉社 2013-03-12 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
たまに、なんで小説や漫画を読む意味があるのか判らなくなる時がある。それは読んでいて、あまりに心が痛くて痛くてたまらないからだ。
重松清の「ナイフ」、ラーゲルクヴィストの「巫女」あたりがそうだった。そして、押切蓮介の「ミスミソウ」もそんな作品の1つだった。
連載当時から結構話題になっていて、私も完結してから読んでみたんだけど、まあ、あまりの救いの無さに悲しくなるよりも驚いた。
春香が作中で「しょーちゃん」と云うたびに、心が引き裂かれそうになる。怒りでしか絶望の淵から登ることはできない、そんな悲しい物語だった。
今、読み返してみると、ストーリーを知ってるせいか、登場人物たちの生の輝きが物語の構成として非常にうまく作られていることに気付く。
今回の完全版にともなって、上・下巻に書き下ろされた話もとてもうまく組み込まれてる。
日本の漫画の歴史としてみても、分水嶺とまでは云わないが、決して消えない作品として残るだろうと思う。正直、もう読みたくないなと思っていたが、やっぱりもう一度読んでみてよかった。改めてすごい作品だった。
「僕だけがいない街」 1巻 三部けい
僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース) 三部 けい 角川書店(角川グループパブリッシング) 2013-01-25 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
よくここまで緻密に積み上げたなあ、と読み終わったあとに感心しきりだった。
主人公の時間を繰り返す能力を、新しい登場人物やいろいろな事件と絡めながらゆっくりと説明していく。
そして、最後に大事件が起こってあの引きですよ。久しぶりにマンガ読んでスゲーと素直に思った。
瓦敬助名義の奈々子さんシリーズのほうが有名な気がしないでもないが、「カミヤドリ」などハイクオリティな作品を続けている作者なので、これからの展開も超期待できる。
これは久々の超おすすめ。2巻待ちきれん。
「終わりのセラフ」1巻 山本ヤマト 降矢大輔
終わりのセラフ 1 (ジャンプコミックス) 山本 ヤマト 降矢 大輔 集英社 2013-01-04 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
山本ヤマトはとても魅力的なキャラを描けるので、これからもどんどん作品を続けていって欲しい作家。
この「終わりのセラフ」も典型的なキャラ配置で分かりやすく、腐女子向けのコンテンツも盛り沢山であり、今後の展開に非常に期待が持てる。
ただ、読んでいるととても不思議な感じに陥る。ドバーンと良い構図で決めているのにカタルシスがそれほど感じられない。セリフ選びも間違っていないのに。
なんでだろうと思うと、それは読みながら常になんとなく考えている、「こうなるかな」「こうなって欲しいな」という展開にことごとくなっていくからだ。
まるで私の嗜好をトレースしたように、おそらく全読者の希望通りの展開になっているはず。
それもある側面ではとても必要なことなんだろうけど、それではクリエイションとして突き抜ける何かにはならないだろうとも思う。
まだ1巻が出たばかり、次巻も楽しみに待ちたい。あと、もうすこしラブコメも……。
「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」 3巻 谷川ニコ
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(3) (ガンガンコミックスONLINE) | |
谷川 ニコ スクウェア・エニックス 2012-12-22 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2巻は少し智子のキャラクターが過剰になりすぎてましたが、この3巻になって再び心のなかでは超おしゃべりのコミュ障に戻っていて、読んでいて爆笑と感涙の間で身悶えました。
特に文化祭編は胸を締め付けられる寂寥感。委員長のキャラクタと相まって智子の悲しみが伝わってきます。
あと、弟に対する愛情がほんとにウケる。プリクラのくだりが最高だった。
しかし、いわゆる友だちがいっぱいいらっしゃるというリア充の方たちには、本当に智子のあの悲しみって理解できないものなんですかね。この3巻を読んで智子と一緒に涙を流せない人は、常に他人の感情に無頓着で生きてきたとしか思えない。
寂しくて、あまりに自分の個性が孤独で、涙が止まらないことがある。そんな高校生がいるんだということを作者は伝えたがっている。
まあ、これだけ今までにないディテールの細かい喪女を描いた作品はないのですから、アニメ化も当然かな。
ネタ物にしかならなさそうだけれど、少しでもこの作品の冷たさが現れてくれればいいかなと思います。
「ブレイクブレイド」 11巻 吉永裕ノ介
ブレイク ブレイド 11 限定版 (メテオCOMICS) 吉永 裕ノ介 ほるぷ出版 2012-11-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
読み終わった興奮がなかなか収まらない。
物語の一旦の鎮火から、点火、そして再燃焼へと続く一連の流れをいつも通り丹念に描いていく。
ライガットが戦いに巻き込まれ、人を殺し、仲間が自分のために死に、そしてまた人を殺す。そうやって深く傷ついていったライガットの心の回復を、ゼスの成長と絡めながら本当にゆっくりと展開させていく。
これこそ物語だと、強く思います。
ホズルの悲しみもとてもいいですね。気持ちが抑えられない状態になっちゃっているので、そんな悲しみをまるで察しられないシギュンもとてもいい。
限定版についてくる設定資料集も、コミックがたまにしか出ないので、キャラクターを思い出すのによい。
クレオの母親だけ水着にしたところに、作者の熱いなにかを感じた。