「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」 宮川さとし

 

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (BUNCH COMICS)

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (BUNCH COMICS)

 

 

 初めて「自虐の詩」を読んだ時と全く同じ涙が流れた。

 

 いかに自分の生が貴重で輝かしいもので、いかに自分の大事な人が愛おしくかけがえの無いものなのか、ハンマーのようなもので頭を全力で殴られたような衝撃を受けた。

 

 題名になっているシーンは、特段特別なことではない。ショッキングなネーミングだが、母を亡くした息子の心情として、ごく普通のものだと僕も思った。

 

 まだ生まれていない自分の子供に向けた作者の手紙が後半に登場する。これが本当に胸を打つ。

 「自虐の詩」は、生きること、そのことだけに意味があると全力で描いた。

 「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」は、死、そのものに意味があるんだと叫んでいる。そして、意味は時間が経つにつれて増えていき、生者を前へと突き動かす力になる、と描かれる。

 僕はまだ本当に大事な人を失った経験がない。本当の寂しさの正体を知らない。

 けれど、もしそんな時に、この作品のことを少しでも思い出すことがあるとすれば、それはきっときっと、大きな救いと助けになってくれるだろうと思う。

 

 読んでよかった。