「ミスミソウ 完全版」上・下 押切蓮介

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)
ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)押切 蓮介

双葉社 2013-03-12
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 たまに、なんで小説や漫画を読む意味があるのか判らなくなる時がある。それは読んでいて、あまりに心が痛くて痛くてたまらないからだ。
 重松清の「ナイフ」、ラーゲルクヴィストの「巫女」あたりがそうだった。そして、押切蓮介の「ミスミソウ」もそんな作品の1つだった。

 連載当時から結構話題になっていて、私も完結してから読んでみたんだけど、まあ、あまりの救いの無さに悲しくなるよりも驚いた。
 春香が作中で「しょーちゃん」と云うたびに、心が引き裂かれそうになる。怒りでしか絶望の淵から登ることはできない、そんな悲しい物語だった。

 今、読み返してみると、ストーリーを知ってるせいか、登場人物たちの生の輝きが物語の構成として非常にうまく作られていることに気付く。
 今回の完全版にともなって、上・下巻に書き下ろされた話もとてもうまく組み込まれてる。
 日本の漫画の歴史としてみても、分水嶺とまでは云わないが、決して消えない作品として残るだろうと思う。正直、もう読みたくないなと思っていたが、やっぱりもう一度読んでみてよかった。改めてすごい作品だった。